法律についてのよもやま話
法律という言葉のイメージ
こんにちは。
堺行政書士事務所の中野です。
みなさんは法律についてどういったイメージをお持ちでしょうか?
おそらくは多くの人があまり身近には感じていないものだと思われます。
それは当然のことで、実生活であまり法律というものを意識する必要はないのが現状です。
その一方、何かトラブルが起こったときに、法律を知っておいたほうがよい、と思われる方も少なからずいるはず。
そこで、今回はちょっとでも法律が身近に感じられるように、コラムを書いていこうと思います。
ちなみに法律の専門職というと真っ先に思い浮かぶのが弁護士ですね。
それに対し、我々行政書士は書類作成という業務に限定されているため、一般的に法律専門職ととらえられることが無い場合があります。
また同業の行政書士先生の中にも自分が法律の専門家と思っていない方もいるほどです。
私のイメージとしては、法律を利用した書類作成とコンサルティング・サービスを半々で行っている感じとでも言えばいいでしょうか。
そういった意味では、法律の世界と、法律にあまりなじまない人たちのかけ橋となる必要があるのではないかと思っています。
そこで今回のお話になるわけですね。
法律は誰のためにあるのか
「法律」と聞くとなにか堅苦しく、あまり親しみは感じられません。
ところがこの法律は誰のためにあるのかというと、それはその国の国民のみなさんのためにあるわけで。
それはみなさんよくご存じだと思います。
犯罪が起きたとき、または犯罪が起きないように犯罪者に対して取り締まる法律が一番イメージがしやすいかもしれません。
これはもちろんみなさんが犯罪被害にあわないように、そして万が一あってしまった場合にいろいろ助けてもえるように、といった内容で、それは犯罪者に向けて作られているわけです。
それでは、憲法はいったいどうなんでしょう。
最近は自衛隊のあり方についてなど、憲法に触れる話題がやや多くなってきたような気がします。
しかしこの憲法でさえ、誰のためにあるかというと、もちろんみなさんのためにあるわけです。
ところがこの憲法、国民のみなさんのためにあるのはわかりますが、
誰に向けてというのが意外に知られていません。
国民のみなさんの利益のために、誰に対して厳しく取り締まるのでしょうか。
答えは時の権力者、いわゆる「お上」です。
過去の歴史から、施政者が市民に対して圧政を敷くことがままありました。
これに対しては、なかなか個人の力では対抗することができません。
そこで憲法を作って、国民を守ることにしたわけです。
ですので、憲法は権力者を取り締まる法だといえます。
つまり、「人権侵害だ!憲法違反だ!」と個人に向けていうのは
基本的には筋違いということになるわけですね。
血の通った法律
よく知られているのは、裁判官は感情に流されず、法律をもとに客観的な事実から判断することが求められているということ。これは被害者の感情に流されてしまっては、正しい判断ができなくなったり、冤罪になってしまったりするからです。
「疑わしきは罰せず」という言葉も聞いたことがあるのではないでしょうか。
一方でよくニュースで流れる裁判の判決で、「なんでこんなに刑が軽いの?」とかいったような、?が頭に残るようなことがよくありませんか?
そんなときは、「もっと被害者の気持ちになってあげてよ!」なんて思うかもしれません。
こういったことから、法律とは血も涙もない冷たいものだという印象を受ける方もいるはず。
ところが実際は法律は「国民の幸せのために」血の通ったものであるのです。
有名な過去の判例でよく取り上げられるこういったお話があります。
いわゆる「宇奈月温泉事件」です。
これはあまりにも有名な事件で、当の現場には記念碑がたっているほど。
内容は以下のとおりです。
7.5キロ先にある黒薙温泉から引湯管によって温泉を引いていた、宇奈月温泉という温泉施設がありました。
その引湯管のうち、6メートルほどが、他人の土地を通ってしまっていたのです。
そこに目をつけたある個人が、その6メートルの引湯管が通っている土地を買い上げ、その後その宇奈月温泉の経営者にその土地を法外な金額で買い上げるか、引湯管を撤去するかを迫ったのでした。
その6メートルの引湯管が通っている土地を適法に所有したわけですから、その個人の主張は、一見すると自分の所有権によって法律的に正当に主張したと考えられます。
ところが権利はあったとしても、その目的、手段があまりにも誠実ではありません。
判決はどうなったか。
これを権利の濫用であるとして、その土地の所有者の主張は退けられたわけです。
ここでは、法律上の権利という決まりごとではなく、その法律が目指すところは正義の実現だという人間らしい血の通った理由によって判決が下されたのでした。
このように、表向きの形にとらわれずに、その法律がいったいなんのためにあるか、何を実現するためにあるかといった考えをもとに判断されることが意外と多く実はあるのです。
そう考えると、ガチガチに堅いイメージの法律に対しての見方も変わってきませんか?
洋の東西を問わず、法律を取り上げたドラマや映画が多く存在するのは、そういった人間らしい部分があるからではないかと思います。
とっつきにくいですが、法律も興味を持って接すると、とてもおもしろいですよ。
新しく何か知識を得たい人にはおすすめです。
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この記事のライターをご紹介
- 中野 浩明 ( ナカノ ヒロアキ ) 堺行政書士事務所
- 堺市を拠点に書類作成、申請手続き代行などの業務を行う街の法律家。業務に並行して遺言書の普及に努めている。
その一方で、長く油絵制作に携わっている経験をもとに、依頼を受けて似顔絵・肖像画の制作などに取り組む。