敷金について

ライター 中野 浩明
カテゴリ 引越しコラム
掲載日 2015/04/22 00:00

120年ぶりの民法大改正

こんにちは。
堺行政書士事務所の中野です。

今年2月のお話ですが、法制審議会で民法の改正要綱案が決まりました。
マスコミ各社の報道によりますと、おおよそ来年度には施行されるであろうとのこと。

民法の改正と一言で言ってもピンと来ない方も多いかもしれません。
今回の改正は約120年ぶりの大改正で、しかも民法というみなさんの生活に直結した法律ですので、これはとても大きなニュースなのです。

一般的にまず関わってくるものとしては、例えば様々な契約における約款について、今までは法律にその規定が無かったのが、条文化されることになりました。
約款といえば、よく保険の契約の際に、細かすぎて多くの人が読みもしないアレですね。

他には、例えば法定利率が変わってくることにより、生活に密接してくる部分で言うと、おそらく自動車保険などの保険料が上がると言われていることなどでしょうか。

事業主さんでしたら、連帯保証人の規定が変わるので、ご家族が債務負担のあおりを受けにくくなる半面、融資が得られにくくなるかもしれない、なんてことがあります。

その他にも様々な改正点があり、今後われわれの生活の多くが変わってしまうかもしれません。
ということで、気になる部分はたくさんありますが、今回は「敷金」に焦点を当てたいと思います。

敷金

敷金については多くの方がご存じだと思います。
なので詳しくは書きませんが、おさらいの意味で簡単に説明してみます。

敷金は関西では保証金と一般的に言われるそうで(私は関西ですが、部屋を借りるときは敷金でした)、もしかしたらそのほうが言葉としては分かりやすいかもしれません。

部屋を借りるときに大家さんに払うお金の一つで、他には礼金などがありますよね。
礼金は文字通りお部屋を貸してくれた大家さんに払うお礼のお金。
普通は返ってきません。

それに対し、敷金は部屋を大家さんに返す時に、未払いの家賃やお部屋の修繕、汚損に対する改装などにかかる費用を差し引いて、返ってくるのが一般的なイメージです。

問題なのは、この敷金についてきっちりとした民法の規定がないことです。
このことによって、いわゆる敷金返還のトラブルが後を絶たないというわけですね。

借りる人からすれば、敷金は返ってくるものと思っていますし、また未払いの家賃はともかくとして、お部屋の修繕、改装にどこまで借主が責任を負うかといった部分の線引きがわかりにくく、結果トラブルとなってしまうようです。
そして、どちらかといえば専門家より大家さんに有利に事が運ぶことが多いと言われています。

果たして正解は・・・と考えても法律に明らかな規定が無いので、どうしたらいいものか、といったところ。

原状回復

先述の敷金については、賃貸契約においての大きなトラブルの元となると申しました。
そのトラブルの中心が「原状回復」についてです。

大家さんの気持ちからすれば、貸したときの状態に戻した、その費用は負担したくない、と思うのは当然。
それに対し、使っていたら自然と劣化するようなところまで責任を負いたくない、とか、はじめから傷があった(汚れていた)というようなことを借主が主張するのももっともです。

つまり原状回復についてのこの問題は、誰がどこまで責任を負い、その費用を負担しなければならないのか、ということに言い換えられるわけですね。

実はこれに関して、法的な強制力はないものの、国土交通省から「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものが出されています。
※関連リンクに国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」へのリンクがあります。

もし今から部屋を借りるという人がいましたら、ぜひこちらをご覧ください。
原状回復についての考え方だけでなく、入退去時の注意事項など、とても参考になります。

今回の法改正では

現在は敷金では法律に明らかにされている部分はありません。
そんな中、今回の法改正では、これら敷金の返還義務に関する規定が条文の中に含まれることになります。
過去の判例などの考え方を条文化するようです。

そして、借主にとって朗報と言われるかもしれないのが、先述の原状回復義務についてです。
普通に使っていて、消耗したり劣化したりする部分については、借主が義務付けられている原状回復の範囲には入らない、つまり費用を負担しなくてもいい、ということです。
ただ、通常でない使用によって破損汚損した場合はもちろん責任は負わないといけないので、注意してください。
また、これらの改正事項はもちろんまだ施行されていませんので、現状では国土交通省のガイドラインを参考に、ということになります。

以上のことをまとめて考えると、結果借主が大きく利益を得ることになりそうです。
これは実は法律の考え方からすると当然の話。
というのも、普段、業として行っているプロである大家さん側と、あくまで賃貸に関しては素人が多い借主とでは、そのままでは契約上あまりに不公平な状態になってしまいます。
その不利な借主の立場を保護し、フェアにしようというのがこの法律、はては改正の目的なのです。

では、大家さんにとって不利益なことばかりなのでしょうか?
実はそうとも言い切れません。

なぜなら、敷金トラブルがこれによって解消されるのならば、借主にとってはもちろん、大家さんにとってもトラブルの負担が減るという大きな利点を得られるからです。
今まではあやふやになっていた敷金、今までならそこから修繕改修費用に充てていた大家さんも、今回の条文化によって敷金の返金の範囲が明らかになるわけですから、それを織り込んで賃貸料などの金額設定を組みなおせばいいのです。

おそらく今回の法改正は、実際の運用はまだ先にしろ、いずれ施行され、みなさんの身近なお話になってくると思います。

これをきっかけに、お部屋をこれから借りようとする方は、法律的な側面もある程度知識に入れて、物件探しに向かえばよいのではないでしょうか。

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この記事のライターをご紹介

  • 中野 浩明 ( ナカノ ヒロアキ ) 堺行政書士事務所
  • 堺市を拠点に書類作成、申請手続き代行などの業務を行う街の法律家。業務に並行して遺言書の普及に努めている。 その一方で、長く油絵制作に携わっている経験をもとに、依頼を受けて似顔絵・肖像画の制作などに取り組む。


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