引越しコラム

掲載日 :
2015年3月20日
/ ライター :
中野 浩明
/ カテゴリ :
引越しコラム

関連タグ : 行政書士、相続、遺言

遺言書は、大きな費用を費やしても書く価値がある。

遺言書について

こんにちは。堺行政書士事務所の中野です。
当事務所は"遺言書の普及"をひとつの理念として事務所を開いております。
なので、会う人会う人に遺言書を薦めています。

こちらをご覧になっている方で、遺言書を書いた事がある人は果たしてどれだけいらっしゃるでしょうか。個人的な印象では1%もいらっしゃらないのでは?と思っています。(完全な独断と偏見なので根拠はありません)
特にお引っ越しを控えている方、みなさんそれぞれ様々な状況だとは思いますが、ざっくり言って新しい門出を迎えられるわけですから、遺言書は馴染まないもののような気はします。
ですが、実はあえて・・・というのが今回のお話です。

遺言書と遺書

「遺言書と遺書って違うの?」
はい。違います。この質問はもう聞きあきるほど聞いてきました。
なので、私も人に会う度に説明するのはもちろん、ブログにも自費出版した小冊子にも書きました。(小冊子は堺市の各図書館で閲覧可能です)
しかし残念ながら、まだまだ、いまでも気の遠くなるくらいたくさんの人が誤解したままです。
長く書くと際限がなくなってしまいますので、端折って短く説明します。

 「遺書」・・・法的な効力はありません。
        ただ死にゆく人、もしくは死を覚悟した人が心情をつづったものです。

「遺言書」・・・書いた人の財産や、様々な権利を死後どうするかを、
        法的な効果を持って残すものです。

さらにそれだけではなく、どのように葬儀をしてほしいとか、残された家族やペットをどうしてほしいとか、今のご本人の希望や、場合によっては人生を終えるまでのご自身の設計図にもなりえます。
今何をしておく必要があるのか、といったように。

どうでしょうか?
遺言書=遺書=死=不吉なもの・・・なんて思っていたのではないでしょうか?
まあ私もそう思っていたのであまり人のことをえらそうに言えませんが、とにかく本当は遺言書はとても前向きで有用なものである、ということなのです。

誰も遺言書を書く気にならない

遺言書は、大きな費用を費やしても書く価値があります。
にもかかわらず、普通は書こうとはしませんし、残された家族の多くは「書いてもらっておいたほうがよかった」と必ずと言ってもいいほど後悔するのです。

実際に当事務所に相談に来られる方の多くが、親や配偶者に遺言書を書いてもらいたい、といったように書くご本人が直接相談に来られるほうが圧倒的に少ないです。
またそのほとんどが、ご本人が認知症になっているなどの理由で遺言書が書けない状態にあります。
これはご本人が存命中で、相続をどうするか考える時間があるだけ、まだましです。
遺言書もなく、ご本人の希望もまるでなにもわからない、遺産すらどれだけあるかわからない状態で相続が始まると、もう大変すぎて想像するだに恐ろしいことになりかねません。

遺言書を書くキッカケ

これだけ大袈裟(ではないかもしれませんが)に脅してみても、みなさん遺言書を書くことはまず無いのではないでしょうか。
病気になってはじめて、「健康にもっと気をつければよかった」と思うように、たいていの人はいざ問題に直面しないことにはまず動かない。
でもそれが普通です。安心してください。
その一方で、遺言書を書くというのはとても大事なことだ、というのは本当に本当のことです。

なので、こうしましょう。
なんでもいいので、キッカケを作って遺言書を書いてしまいましょう。
ちなみに遺言書は15歳から書くことができると法律で決まっています。
考えられるキッカケとしては、大学進学、就職、結婚、引っ越し、出産など。
遺言書を書くのは、現在の自分の財産を把握することや、今後の人生の方針を決めることにも繋がりますし、逆に考えると、引っ越しの際に様々なものを整理するのと並行して身辺を整理する、といったようにうまくお互いに作用しあったりします。

何回書きなおしてもかまいません。最後に書いた遺言内容が有効なのです。
こうなると、残された家族のための遺言書、というのはオマケにさえ見えてきます。
これは決して強引に結び付けたお話ではありません。
書いた人だけが実感できる遺言書の利点です。

遺言書の書き方

今はどんな小さな本屋さんに行っても、様々な遺言書に関する本がありますので、
本を読めば、書くだけならすぐに簡単にできます。自筆の遺言書なんかはそれこそ本当にいますぐ書けます。
紙とペンを用意して下さい。
書くときのコツは三つ。
 ①必ず最初から最後まで自分の手で書く
 ②実印を使う
 ③日付は何年何月何日まできっちりと、名前は他の誰かと間違わない程度に書く
これだけです。
この三つは法律で決められた部分もあれば、後のトラブルを回避するコツも含まれています。
おそらく一時間もかかりません。そして、書いてみると、どこを明らかにしないといけないか、深く考えないといけないかが見えてきます。

困った時は専門家にご相談を。
問題解決だけでなく、あっと驚くような提案が出てきたりします。
できるだけ費用をかけたくない人もいるかもしれませんね。
そういう人は専門家に頼らず、頑張って勉強して、いい遺言書を書くこともできるでしょう。

とにかく一度、この機会に書いてみてください。
きっと新しい何かが見つかります。

この記事のライターをご紹介

  • 中野 浩明 ( ナカノ ヒロアキ ) 堺行政書士事務所
  • 堺市を拠点に書類作成、申請手続き代行などの業務を行う街の法律家。業務に並行して遺言書の普及に努めている。 その一方で、長く油絵制作に携わっている経験をもとに、依頼を受けて似顔絵・肖像画の制作などに取り組む。
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